鳳梨酥だけじゃない、佳德の柔らかいサチマ──おこしじゃない方の本命
佳德(チアダー、Chia Te)の店頭は、いつも鳳梨酥を求める人で賑わっています。日本人観光客の手元を見ていると、ほとんどが原味鳳梨酥か蔓越莓鳳梨酥の箱。レジに並ぶ人の手にも、たいていは同じ箱が抱えられています。
でも、店内の棚をぐるっと見渡してみると、鳳梨酥のとなりに、もう一つ気になるお菓子があります。透明な袋に入った、四角くカットされた塊。サチマ(沙琪瑪、薩其馬)です。
鳳梨酥のすぐ横にあるのに、初めて来た観光客はまず気づきません。今回はその、佳德の隠れた一品と、台湾の超市でいつでも手に入る日常版──卡賀(カホー)のサチマを、合わせて紹介します。
サチマって、おこしのこと?
サチマを初めて見た日本人の方は、おそらく「おこしに似ているな」と思うはずです。たしかに見た目は近い。麺の生地を細く切って揚げ、砂糖蜜で固めて四角く成形する──作り方の発想も、おこしや、かりんとうの仲間に近いものがあります。
ただ、実はサチマは台湾発祥のお菓子ではありません。元々は清朝時代の満洲発祥の菓子で、北京や中国東北地方では今でも伝統的なお菓子として食べられています。日本でいうと、唐菓子の流れに近いかもしれません。
ではなぜ台湾でも親しまれているのか。それは、戦後の台湾の駄菓子屋(柑仔店、ガンザディアン)の定番として何十年も並んできたからです。台湾人にとっては、子どもの頃の駄菓子屋で買った懐かしいお菓子、家でちょっと小腹がすいた時の零食(リンスー、おやつ)──そんな位置づけです。
「中華菓子なのに台湾を語るの?」と思われそうですが、台湾の食べ方や、台湾メーカーが作る独自のアレンジは、本場の北京・東北の伝統サチマとはまた違ったものになっています。今日紹介する二つは、どちらも台湾で作られている、台湾人が日常的に手に取る、台湾のサチマです。
「硬い派」と「柔らかい派」がある
サチマには、大きく分けて二つの食感の流派があります。
硬め派は、おこしに近いタイプ。麺生地と糖蜜がしっかり固く密に詰まっていて、ガリッ、ザクッと噛みごたえがあります。日本人がサチマと聞いて想像するのは、たぶんこちらに近い。ただ、硬めの中には、口の中の上顎を擦ってしまうほど固いものもあって、慣れていないと食べづらいことがあります。
柔らかめ派は、いわゆる「入口即化」(口の中で溶ける)ではなく、歯にすっと入って、噛む時に負担がないくらいの柔らかさ。麺生地と糖蜜の間に程よく空気が入っていて、口当たりが軽い。歳を取った家族でも食べやすいタイプです。
正直に言うと、私は断然柔らかめ派です。硬い派も悪くないけれど、毎日食べたくなるのはやっぱり柔らかい方。お茶請けにしてもごく自然に手が伸びるのは、柔らかい派の方だと感じています。
今日紹介する佳德と卡賀は、どちらも柔らかめ寄り。並べて食べてみると、それぞれの個性がはっきりわかります。
佳德のサチマ──やや柔らかめ寄り
佳德のサチマは、二種類あります。原味(プレーン)と黒糖。鳳梨酥の箱の横、棚の一段下のあたりに、ひっそりと積まれています。
食感は「中間〜やや柔らかめ寄り」。完全にホロホロというわけではなく、麺生地の存在感がちゃんとある、噛みごたえも残っているタイプです。原味は卵の風味が前に出て、すっきりした甘さ。黒糖は奥行きのあるコクと、少しキャラメルに近い香ばしさが加わります。
おもしろいのは、これが本店店頭限定で、佳德のオンラインショップにも、デパートの催事にも並ばないこと。鳳梨酥を箱で買って帰る人の流れの中で、本店に立ち寄った人だけがそっと一袋追加していく──そんな存在です。
鳳梨酥を職場や家族へのお土産にして、サチマは自分用に。これが、私が佳德に行く時の裏技です。
卡賀のサチマ──完全に柔らかい派、超市の定番
もう一つの本命は、超市(スーパー)で買える卡賀(カホー)のサチマです。
苗栗・竹南の德一食品工業という会社が作っているブランドで、家樂福、全聯(PXMart)、PChome、momo、Yahoo 購物中心など、台湾の主要な超市・通販なら、ほぼどこでも見かけます。
卡賀のサチマは、佳德よりさらに柔らかい。完全に「柔らかめ派」の本命です。一口噛むと、歯にすっと入って、糖蜜の控えめな甘さがじんわり広がる。後を引かない、軽い甘さです。
定番は雞蛋(プレーン、卵風味)と黒糖の二種類。他にも蔓越莓(クランベリー)、海苔、台湾風味などのバリエーションがあります。最初の一袋は、雞蛋か黒糖から入るのがおすすめです。
サイズも色々あって、500g の大袋(手提げ袋型)から、55g の小さなミニサチマまで。家のおやつ用なら大袋、ちょっと試したい人や、職場で分けたい人なら 400g クラスや小分けタイプが扱いやすいです。
私のおすすめの食べ方──台湾烏龍茶と合わせて
私のおすすめは台湾烏龍茶。文山包種(ぶんざんぽうしゅ)の軽やかな香り、凍頂烏龍(とうちょううーろん)の少し焙煎感のある深み、東方美人(とうほうびじん)の蜜のような甘い香り──どれも、サチマの卵と糖蜜の風味とぶつからずに、お互いを立てる組み合わせだと感じます。
逆に、私の感覚ではコーヒーとは相性がよくありません。甘さ同士がぶつかってしまい、サチマの繊細な軽さが消えてしまう気がするのです。ただ、これは本当に好みの話なので、コーヒー派の方は普通にコーヒーと合わせて大丈夫です。
夕方の小腹がすいた時間に、温かいお茶とサチマを一切れ。私にとっては、台北での「ちょっと一息」の時間に欠かせない組み合わせです。
📍 店舗情報
このノートで紹介したお菓子のうち、佳德のサチマは本店でのみ手に入ります。
佳德糕餅(チアダー・ガオビン、Chia Te Bakery)
- 住所:台北市松山區南京東路五段 88 號
- 最寄駅:MRT 松山新店線「南京三民駅」2 号出口から徒歩約 2〜3 分
- 電話:02-8787-8186
卡賀のサチマは家樂福、全聯(PXMart)、台北の主要超市の菓子コーナーで広く取り扱いがあります。オンラインなら PChome 24h、momo 購物網、Yahoo 購物中心など。
おわりに
鳳梨酥を買いに佳德まで足を運ぶなら、ぜひ棚の隅にも目を向けてみてください。鳳梨酥は人にあげる用、サチマは自分用。それが、私が佳德に行く時の決まったパターンです。
そして、滞在中に超市に寄る機会があれば、卡賀のサチマを一袋。台湾烏龍茶と一緒に、宿でゆっくり食べる時間──それは観光ガイドには載っていないけれど、台湾人がずっと続けてきた、ふつうの幸せの時間です。
おこしじゃない方の本命、ぜひ一度。
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ゆきひめ(台湾在住・グルメ手帖)