鼎泰豐、小籠包だけじゃもったいない——もうひとつの注文、もうひとつの並び方

2026-06-23 · 台湾グルメ

鼎泰豐の話を書こうとすると、最初に手が止まります。

なぜなら、日本人読者の方はほぼ全員、鼎泰豐をすでに知っているから。何なら、私より行った回数が多い方もたくさんいるはずです。だからこのノートは「鼎泰豐ってどんな店?」という紹介ではなくて、何度来ても同じ注文をしている方に、もう一歩深い楽しみ方を提案するものとして書きます。

具体的には、二つの話をします——注文の組み立て方と、並ばない並び方

鼎泰豐は「中華レストラン」です

念のため一行だけ。鼎泰豐は 1958 年に台北で創業した中華レストランで、看板の小籠包はもちろん有名ですが、ジャンルとしては上海・江浙系の中華の老舗です。

日本の方の多くは「小籠包の店」というイメージで来店して、小籠包と酸辣湯と、ついでに鶏スープを頼んで帰ります。それで満足できるのが鼎泰豐のすごいところでもあるのですが——そのお店は、本当はもっと広い

在地の人は、こう頼みます

小籠包は当然頼みます。それは前提。でも、それと同じくらい力を入れて頼むのが、野菜と炒飯と小菜です。

私が日本の友人を案内するときに必ず勧める 5 品を、解説していきます。

乾煸四季豆(ガンビェン・スーチートウ)

四川料理の代表的な前菜。インゲンを高温の油で表面がしわしわになるまで揚げ焼きにして、豚肉のそぼろ、ザーサイ、ニンニクと一緒に炒めたものです。

表面はしわっとして香ばしく、中はじゅくっと水分が残っている——この食感の対比が、乾煸(ガンビェン)という調理法の真骨頂です。鼎泰豐の乾煸四季豆は、油の切り方が絶妙で、しつこくない。日本の方には「あ、こういう中華もあるんだ」と毎回驚かれる一品です。

寧式黃芽菜(ニンシー・ホアンヤーツァイ)

これは鼎泰豐ならではの名物。寧波(ニンポー)風の白菜の漬物炒めで、私の知る限り、これと同じレベルで作る店はそう多くありません。

塩漬けにした白菜を細く切って、油で炒めて、少しの砂糖で味を整える——シンプルな料理ですが、白菜の発酵による旨味と、絶妙な塩加減で、ご飯にもお酒にも合います。地味な見た目ですが、メニューを見て「あれっ、これ何だろう」と気づいた人だけが頼める、隠れた看板です。

排骨蛋炒飯(パイクー・タン・チャオファン)

鼎泰豐は実は炒飯がものすごく美味しい店です。これは在地の人の常識ですが、観光で来る日本の方の 9 割は知らないと思います。

ご飯は粒立ちのよい長粒米を、強火で卵と一緒に炒めて、上に分厚い揚げた排骨(豚スペアリブ)が乗っています。炒飯と排骨が同じ皿に乗っているのは、台湾の昔ながらの食堂のスタイルで、これを五つ星級の精度でやっているのが鼎泰豐です。

小籠包を 1 〜 2 籠、酸辣湯を 1 杯、そしてこの排骨蛋炒飯を一皿頼んで、2 人でシェアする——これがいちばんバランスのいい注文だと、私は思っています。

莧菜(シェンツァイ)と A 菜(エイツァイ)

ここから台湾の在地の話。

台湾人は、外食でほぼ必ず葉物野菜を一皿頼みます。鼎泰豐に来てもそれは同じで、メニューには季節の葉物が複数並んでいます。日本の方が頼むことが少ない、けれど私が必ず勧めたいのが、莧菜(シェンツァイ)と A 菜(エイツァイ)

  • 莧菜:日本でいう「ひゆ菜」、英語だと amaranth greens。茎を切ると鮮やかなピンクの汁が出ます。シャキシャキした食感で、ほんのり甘い
  • A 菜:レタス(萵苣)の一種で、台湾でいちばん一般的な葉物。茹でて醤油系のタレで食べるのが定番。少しほろ苦くて、口の中をさっぱりさせてくれる

どちらも炒めても茹でても出てきますが、鼎泰豐は「炒め」のほうがおすすめ。にんにくの香りを油で立てて、青菜だけをサッと炒める——簡単に見えますが、火加減と塩のタイミングがプロの腕の出るところです。

油っぽい小籠包と炒飯の合間に、青菜を一口」——これが、台湾の食卓のリズムです。

そして、小籠包

ここまで読んで「小籠包の話、ないじゃん」と思った方、その通りです。なぜなら、小籠包は説明不要だから。

念のため食べ方だけ書いておくと——蓮華に乗せて、皮を箸で破って、スープを少し冷ましてから一口で。生姜と黒酢は、最初の 1 個は何もつけずに味を確かめてから、2 個目以降に。これだけです。

もう一つの本題——並ばない並び方

ここからが、このノートで本当に伝えたかった話です。

鼎泰豐は、基本的にほとんどの店舗で予約不可。現場で番号札を取って待つしかありません。週末の昼や夕方なら、1 時間待ちは当たり前、人気店舗だと 2 時間ということもあります。

でも、これには裏技があります。

1. 食事の 1〜2 時間前に、番号札だけ取りに行く

これが核です。食事の予定時間より 1〜2 時間早く、店舗に行って番号札だけ取って、その場を離れる——これが在地の人がやっていることです。

番号札を取ったあと、お店に張り付いている必要はありません。近くで買い物したり、コーヒーを飲んだりして、自分の番号が近づいてきたら戻ればいい。

2. 自分の番号の進み具合を、スマホで見る

これは知らない方が多い情報ですが、鼎泰豐の公式サイトに、リアルタイムで叫号進捗を見られるページがあります:

鼎泰豐 現場到號查詢

このページ、日本語表示にもちゃんと対応しているんです。「待ち時間」「店内食事の呼出し番号」「発券予定終了時間」——日本の方が来ることを完全に想定して作られています。

店舗を選ぶと、いま何番が呼ばれているか、推定の待ち時間が表示されます。自分の番号と差を見ながら「あと 30 分くらいだな」と判断して、戻る時刻を決められる。

公式アプリ(「鼎泰豐」で検索)もありますが、ブラウザだけで十分使えます。

3. もう一つの優しさ——あなたの言語で呼ばれます

これは裏技というよりサービスの話ですが、鼎泰豐では番号札を取るときに、店員さんが「Where are you from?」と聞いてくれます。これは丁寧で聞いているのではなくて——叫号(番号の呼び出し)を、あなたの国の言語で行うため

日本の方が番号札を取れば、店内アナウンスや表示は日本語で呼ばれます。「番号〇〇番のお客様、お待ちしています」と、店員さんが普通に日本語で言ってくれます。

最初これを知ったとき、私は素直に「あ、これが鼎泰豐がここまで世界的な店になった理由か」と思いました。

📍 店舗情報・並ばないコツ

鼎泰豐の北部主要店舗:

  • 新生店(本店系):MRT 東門駅、信義路 2 段。観光ならいちばん雰囲気がある
  • 101 店:MRT 台北 101・世貿駅。観光と組み合わせやすい
  • 新光三越 A4 店・遠百信義 A13 店:信義區内の同じエリアに複数店舗。実は A4 と A13 は比較的空いている、というのが台北人の合言葉
  • 天母店:天母地区。平日なら待ち時間が短いことが多い
  • 復興 SOGO 店:MRT 忠孝復興駅。こちらも穴場気味

最新の店舗一覧・営業時間は、公式サイトでご確認ください。
リアルタイムの叫号進捗は、現場到號查詢ページで。

このノートで触れないこと

  • どの店舗の小籠包がいちばん美味しいか:基本的にどの店舗でも品質は揃っています。観光で雰囲気を味わいたいなら新生本店、合理的に食べたいなら空いている店舗で十分です
  • 海外の鼎泰豐(日本、米国など)との違い:海外店舗は私はあまり詳しくないので、ここでは触れません。台湾の本店系の話に絞っています

おわりに

「小籠包と酸辣湯だけで帰らないで」——これが、このノートでいちばん伝えたかったことです。

鼎泰豐は、何度来ても新しい料理を発見できるお店です。乾煸四季豆、寧式黃芽菜、排骨蛋炒飯、莧菜、A 菜——次に来たときに、このうちのどれか一つでも頼んでみてください。「あ、鼎泰豐ってこういう店だったんだ」と、印象が一段深くなるはずです。

そして並ぶときは、1〜2 時間前に番号札を取って、スマホで叫号を見ながら近所で過ごす。これだけで、台北の貴重な観光時間が、列に立って消えなくて済みます。


ゆきひめ(台湾在住・グルメ手帖)