鼎泰豐より 23 年も先輩——日本人が見落とす、台北の上海菜の本命「高記」
台北の永康街エリアに行く日本人観光客のほとんどは、鼎泰豐に並びます。それは正解です。
でも、その通りで 70 年以上前から営業している、もう一つの上海菜の名店があることを、知っている日本人は意外と少ない。
「高記(カオ・チー)」——1949 年創業、台北の上海菜・江浙菜の原点とも言えるお店です。
鼎泰豐より、ずっと先輩
最初に時系列を整理させてください。
- 高記:1949 年創業
- 鼎泰豐:1972 年創業
その差、23 年。鼎泰豐が永康街で店を開いた時、高記はすでに永康街で 23 年間営業していた老舗でした。
つまり、永康街が「上海点心の町」になったのは、もともと高記がそこにいたからです。
創業者の高四妹さんは浙江省仙居県の出身。16 歳で上海に出て点心の修業をし、1949 年に台北の永康街に来て、最初は屋台から始めました。手のクオリティが評判を呼んで、店舗に拡張。後に総統府に呼ばれて、政府高官や外賓のために上海点心を作ることになるほどの腕前でした。
今の永康街エリアの上海点心店の多くは、もともと高記で修業した職人たちが独立して開いた店です。つまり、高記は永康街上海菜の「祖父」みたいな存在。
永康街本店、いったん閉店した話
ここで一つ、悲しい話を挟みます。
70 年以上続いた永康街本店は、2020 年に建物の法規問題で閉店せざるを得なくなりました。
地元の常連客にとっては、ちょっとした衝撃でした。70 年通った場所が消える、というのは。
でも、休業期間を経て、2021 年春節明けに新生南路と信義路に新店をオープンして、老舗は復活します。そして 2024 年には永康商圏に戻る形で「高記信義小館」をオープン——鼎泰豐本店のちょうど真向かいに。
この立地の対比、よくできた物語です。
招牌:上海鉄鍋生煎包
高記といえば、まずはこれ。上海鉄鍋生煎包——小さな鉄鍋ごとテーブルに運ばれてくる、ジューシーな生煎包です。
注目してほしいのは「鉄鍋ごと」という部分。
普通の生煎包の店は、大きな業務用鉄板で焼いて、お皿に盛って出します。それを、第三代の経営者が「小さな鉄鍋で現場で焼いて、そのまま客の前に出す」スタイルに改良しました。鉄鍋の中でジュージュー音を立てながら出てくる、あの瞬間が高記体験のクライマックスです。
底はカリッと焦げ目がついて、上はふんわり、中はジュワッと熱い肉汁。熱々のうちに、生姜と黒酢を少しつけて食べる。これは絶対に最初に頼んでほしい一品。
私が高記に行く時の、いつもの注文
ここからは個人の好みです。高記新生店で、私が毎回頼んでしまう組み合わせを書いておきます。
1. 上海鉄鍋生煎包
説明済み。これは入店即注文。
2. 干絲嫩肉絲(または嫩牛絲)
干絲(細く切った豆腐の干物)と、柔らかい豚肉(または牛肉)の細切りを炒めた一皿。淮揚菜の伝統的な技法で、味は塩気が効いた家庭的な仕上がり。白いご飯と合わせると最強です。
3. 無錫燜子排
江蘇省無錫市の名物料理。豚スペアリブを醤油と砂糖でじっくり煮込んだ、甘辛い味付け。かなり甘いので、塩気の強い他の料理とバランスを取って頼むのがコツ。骨から肉がほろっと外れる仕上がりが美しい。
4. 生菜鮮蝦鬆
刻んだエビと野菜を炒めて、レタスに包んで食べる料理。「鬆」は中華料理用語で「ふわっと細かく」という意味。自分の手でレタスに包んで食べる、テーブルが盛り上がる一品。聚餐(パーティー的な集まり)の定番メニューです。
5. 豆酥鱈魚(または清蒸大比目魚)
魚料理の選択肢。豆酥鱈魚は、タラの蒸し物に細かい大豆フライを散らした、香ばしくて優しい味の一品。清蒸大比目魚(オヒョウの清蒸し)はもっとあっさり派向け。外省人家庭の食卓を思い起こさせる懐かしい味です。
6. 清炒高麗菜(または櫻花蝦高麗菜)
野菜は必ず一皿。プレーンな炒めキャベツでも、桜エビと合わせたバージョンでも、どっちでも美味しい。重い料理の合間に挟むと、口がリセットされて次の一品が楽しめる。
7. 鮮蝦抄手(花生粉付き)
最後に必ず頼むのがこれ。エビが入った抄手(小ぶりなワンタン)に、ピーナッツの粉が振りかけられているのが高記の特徴。一般的な抄手とちょっと違う、四川と上海の中間みたいな食べ方。これがクセになります。
それと、白いご飯
これは強調しておきます。高記のおかずの多くは、ご飯と合わせて食べる前提で作られています。鼎泰豐のように小籠包だけで完結する食べ方じゃなくて、ちゃんとご飯を一緒に頼む。これが「合菜」という台湾の食べ方です。
📍 店舗情報
このノートで紹介した料理は、すべて 高記新生店 で頼める内容です。
高記新生店
- 住所:台北市大安区新生南路一段 167 号
- 最寄駅:MRT 大安森林公園駅 1 番出口から徒歩 3 分
- 営業時間:10:30〜20:30
- 電話:02-2751-9393
- サービス料:10% 別
- 予約:原則なし、現場待ち
高記には他に信義小館(東門駅、鼎泰豐本店の向かい)と南京東店もありますが、桌菜のフルコースをじっくり楽しめるのは新生店です。一人で生煎包と麺類だけ、なら信義小館も便利です。
このノートで触れないこと
正直に書いておくと——
鼎泰豐との比較は、あえて深入りしません。「どちらが上か」という話ではなくて、ジャンルが少し違うんです。鼎泰豐は小籠包を主軸にしたクリアで上品な路線。高記は江浙菜のフルコース、家庭的で力強い路線。「どちらか一方」じゃなくて、台北旅行の中で両方体験する価値がある、と思います。
価格帯は鼎泰豐より少し高めです。70 年以上の歴史を持つ江浙菜の本格的な味、と思えば妥当な金額。最新の価格は店頭メニューでご確認ください。
訂位(予約)については、新生店は基本的に予約を受け付けない時期もあるので、現地で並ぶか、電話で確認するのが安全。週末のディナータイムは特に混みます。
結論
鼎泰豐は、もちろん正解です。日本人観光客が並ぶ理由が、ちゃんとある店です。
でも、その通りには、鼎泰豐より 23 年早くから営業している、上海菜の原点があります。
ジュージュー音を立てる鉄鍋生煎包、ピーナッツ粉のかかった抄手、ご飯と合わせて食べる江浙菜のフルコース——日本のガイドブックには載っていない、もう一つの永康街の風景です。
次に永康街に行く時は、鼎泰豐の隣にある「高記」も、一度立ち寄ってみてください。
ゆきひめ(台湾在住・グルメ手帖)