台中家庭食堂——住宅街の民家で、シェフ一人が作る本気の中華「福味香小館」
台中に来る日本人観光客の行き先は、だいたい決まっています。宮原眼科でアイスを食べて、春水堂でタピオカを飲んで、夜は逢甲夜市。どれも楽しい。でも、台中の人に「今夜、家族でうまいものを食べるならどこ?」と聞くと、返ってくる答えは観光地図に載っていない場所ばかりです。
今回紹介する「福味香小館(フーウェイシャン・シャオグァン)」は、その典型のような店です。
見た目は民家、中身は本気
場所は北屯(ベイトゥン)区の興安路。小学校の側門の向かいにあって、外観はほとんど普通の民家です。赤い看板がなければ、食堂だと気づかずに通り過ぎるレベル。ところが Google マップの評価は 4.5 前後をずっと維持していて、夜は予約客でほぼ埋まります。
そして、この店のいちばん面白いところ。厨房に立つシェフは一人です。
一人なのに、メニューには上海菜、四川菜、客家菜、台湾式の熱炒(快炒)、さらにタイ風の一皿まで並びます。普通なら「手を広げすぎでは」と疑うところですが、地元の食べ歩きブロガーたちが繰り返し通って記事を書いているのが答えだと思います。
何を頼むか
私のおすすめは三皿。偶然ですが、どれも「名前と中身が違う」台湾中華の面白さが詰まっています。
一皿目は韭香蒼蠅頭(ツァンインドウ)。直訳は「ハエの頭」ですが正体は豆豉のこと。刻んだ韭菜花と豚ひき肉、豆豉を強火で炒めた台湾生まれの川味で、名前は怖いのに白飯が止まらない一皿です。
二皿目は干絲豬肉(ガンスー・ジューロウ)。干絲は麺のように見えますが、麺ではありません。豆腐を固くプレスした「豆干」を細く千切りにしたもので、江浙系の家常菜ではおなじみの食材。豚肉の細切りと一緒に炒めると、淡白なのに噛むほど大豆の香ばしさが出てきて、箸休めのようでいて主役級の存在感があります。
三皿目は蟹黃豆腐煲(シエホァン・ドウフバオ)。直訳すると「カニみそ豆腐の土鍋煮込み」——ですが、カニは入っていません。 台湾の食堂の「蟹黃」は、カニみその色と雰囲気を再現した見立て料理で、すりおろしたニンジンをベースに黄金色を出すのが定番のやり方(店によっては塩漬け卵の黄身を使うところもあります)。とろとろの豆腐にオレンジ色の餡が絡んで、見た目は完全にカニみそ。ただし、カニ以外の海鮮の具材は入っているので、魚介アレルギーのある方は注文前に確認してください。「カニは不在なのに海鮮は入っている」——名前のややこしさも含めて、台湾食堂らしい一皿です。
ハエも入っていないし、カニも入っていない。でも、どれも本気でおいしい。炒め物は NT$150 前後からで、一皿がだいたい 3〜4 人前。家族で数皿頼んで白飯を並べる、台湾の「合菜」(みんなで囲んで取り分ける食べ方)の店です。
在地人の食べ方
この店には、地元客が守っている暗黙のルールがあります。
電話予約のとき、料理も一緒に注文しておく。
厨房が一人なので、席に着いてから注文すると、混雑時はかなり待ちます。常連は予約の電話で人数と料理を先に伝えて、店に着いたら順番に皿が出てくる状態を作っておきます。旅行者には少しハードルが高いやり方ですが、台湾の家庭式食堂の「中の人」感覚を体験できる店でもあります。
席は一階に数卓だけ。二階に大人数向けの個室もあります。支払いは現金のみ、サービス料はかかりません。
📍 店舗情報
このノートで紹介した料理は、すべて 福味香小館 で頼める内容です。
福味香小館(フーウェイシャン・シャオグァン)
- 住所:台中市北屯區興安路一段86號
- 最寄駅:台中MRT 四維國小駅から徒歩 8 分前後
- 営業時間:11:00〜14:00/17:00〜20:30(目安)
- 定休日:家庭経営のため、営業時間・定休日とも固定ではありません。訪問前に電話での確認をおすすめします
- 電話:04-2233-5218
- サービス料:不要
- 支払い:現金のみ
- 予約:電話(席だけでなく、料理も先に注文しておくのが在地流)
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ゆきひめ(台湾在住・グルメ手帖)