鼎泰豐じゃない、もうひとつの 18 摺——南台湾 30 年の本命「漢來上海湯包」
台湾で小籠包と言えば、日本人の方はほぼ 100%「鼎泰豐」を思い浮かべます。
それはそれで全然間違いではないのですが、台湾の在地の人にもう一つ聞いてみてほしい名前があります——「漢來上海湯包」。1995 年、高雄漢來大飯店(五星級ホテル)の中で生まれて、南台湾で 30 年愛されてきたブランドです。
南から、全台へ広がったブランド
台湾に来ると忘れがちなのですが、台湾の名店は必ずしも台北から始まるわけではありません。
漢來上海湯包は高雄発祥。そこから台南、台中、桃園、新竹、そして台北——南から順番に北上していって、現在は全台で約 10 店舗を展開しています。
日本で言うと、福岡か大阪で生まれた老舗が、30 年かけて全国に広がっていった——みたいな感覚に近いかもしれません。南部の人にとっては「子供の頃から食べていた漢來」、台北の人にとってはここ数年でようやく身近になった「南で評判の店」。同じブランドでも、世代と地域で温度感がちょっとずつ違うのが面白いところです。
私個人としても、以前は高雄に出張したときの楽しみだった店が、今は台北・台中・桃園・新竹、どこで仕事があってもアクセスできる——というのは、なかなかありがたい変化です。
看板の 18 摺小籠包
漢來の看板は、皮を 18 摺 に畳んだ小籠包。
数字に意味があります。摺りの数が多ければいいというものではなく、「18 摺がいちばんバランスがいい」と決まっている、という話です。麺皮は 6 グラム、手で擀(の)して、現場で包んで、現場で蒸す。店舗によってはガラス越しに職人さんが包んでいるのが見えるので、待ち時間にぼんやり眺めているだけでけっこう楽しいです。
中の餡は、豚もも肉に、老母鶏(年配のメスの鶏)と豚皮を煮込んだ皮凍(ゼラチン)を合わせたもの。口の中で皮凍が溶けて、あのスープになります。
食べ方は、薑絲(生姜の千切り)を少し添えて、お酢を一滴。私が好きなのは、最初の 1 個は何もつけずに食べて、皮と餡そのものの味を確かめてから、2 個目以降に薑絲と酢を合わせるやり方です。スープが熱いので、レンゲに乗せてから一口、というのは鉄則。
1 籠 6 個。鼎泰豐より少し安い、くらいの感覚です。
在地人が必ず頼む、排骨蛋炒飯
ここで台湾の在地の話を一つ。
台湾人が小籠包の店に行くと、ほぼ必ず排骨蛋炒飯(パイコー卵チャーハン)を一緒に頼みます。観光ガイドだと小籠包ばかり目立ちますが、現地の人にとって炒飯は「小籠包と同格の主役」です。漢來でも、人気メニューの 2 位は排骨蛋炒飯だと公式に出ています。
漢來の排骨蛋炒飯はちょっと面白くて、お米にタイのジャスミン米(細長いインディカ系)を使っています。日本のチャーハンに慣れていると最初は「あ、長い」と思うかもしれませんが、これがパラパラに仕上がる秘訣で、卵の香りが一粒一粒に絡んで、油っぽくならない。
上に乗っている排骨(豚スペアリブの揚げ物)は、現場で揚げているので衣はサクサク、中は厚みがあってジューシー。台湾の古い洋食屋スタイルの味付けで、ご飯と一緒に食べても、単品でかじっても成立します。一皿で 2 人で分けてちょうどいい量です。
隠れた本命、原味清蒸鮮魚
小籠包と炒飯で終わらせるのは、ちょっともったいない。
私が個人的に勧めたいのは「原味清蒸鮮魚」。海鱸魚(スズキの仲間)を、味付けを最小限にして蒸した一品です。
「鮮魚」と書いてあるメニューは、台湾の中華レストランだとだいたい当たりだと思っていいです。なぜかというと、鮮度がそのまま味に出るので、五星級ホテル系のお店ほど力を入れている領域だから。漢來はもともと高雄漢來大飯店発祥なので、海の魚の扱いが上手いんです。発祥が港町・高雄、というのも納得の得意分野です。
清蒸(チンジョン、シンプルに蒸す調理法)は素材勝負。脂っこい湯包と炒飯の合間に、これを一口入れると口の中がリセットされて、また小籠包に戻れる。台湾の中華料理で「淡い味」のメニューは、実はちょっと貴重です。
メニューに「原味」と書いてある方を選んでください。同じ鮮魚でも、香辣(辛い)バージョンや、酸白菜(発酵白菜)と一緒に蒸すバージョンもあるので、注文時に確認を。
締めは、豆沙鍋餅
中華のデザートと聞くと、日本人の方は杏仁豆腐を想像すると思うのですが、台湾の上海系・江浙系のお店で頼んでほしいのは、断然「豆沙鍋餅(トウサークオピン)」です。
薄く伸ばした皮で、豆沙(あんこ)を包んで、油でカリッと焼いた——形は卵焼きみたいな長方形に切り分けて出てきます。
外側はもち米の皮のような、ちょっと餅っぽい食感。中の豆沙は、日本の和菓子のあんこより甘さ控えめで、油の香ばしさと合わさって、しつこくない。日本の方で「中華のあんこ」が苦手だった方も、これだけは食べられるという人が多いです。
熱いうちに食べるのが鉄則。冷めると皮が固くなるので、出てきたら最初に手をつけるくらいの気持ちで。
📍 店舗情報
漢來上海湯包は現在、全台で約 10 店舗を展開しています。旅行で立ち寄りやすい主な店舗は以下のとおりです(百貨店内の店舗が中心なので、買い物や観光のついでに組み込みやすいはず)。
- 台北・信義區:Dream Plaza 店(MRT 市政府駅/MRT 台北 101・世貿駅圏内)
- 台北・南港:LaLaport 南港店(MRT 南港展覽館駅直結)
- 桃園:台茂店
- 新竹:遠百竹北店
- 台中:漢神洲際購物中心店
- 台南:南紡店、誠品台南店
- 高雄:夢時代店(発祥のホテル系列)
各店舗の最新の住所・営業時間・予約方法は、公式サイトでご確認ください。昼食・夕食ともに混む店舗が多いので、休日は予約推奨です。
このノートで触れないこと
- 鼎泰豐との比較:好みの問題なので、両方食べてみてください。漢來は南部発祥で、鼎泰豐よりちょっと「ホテル中華」寄りの味付け、というのが私の印象です
- 「どの店舗が一番美味しい」論:基本的に各店舗で味は揃えてあります。アクセスのしやすさで選んで大丈夫です
おわりに
南部の人が 30 年かけて愛してきた店が、いまは台湾のあちこちで食べられるようになりました。
「南の人が先に知っていた」というのは、台湾を旅する楽しさの一つだと思っています。台北で初めて漢來を知った方は、次に高雄や台南に行くことがあったら、ぜひそちらの店舗も覗いてみてください——同じ 18 摺の小籠包が、もう少し年季の入った空間で待っています。
ゆきひめ(台湾在住・グルメ手帖)