悠遊カードは Suica の親戚、でも「ピッ」のルールは違う——台北 MRT とバスで戸惑わないための小さな常識

2026-07-05 · 台湾旅行のコツ

外国からの旅行者がバスの後ろの扉から降りようとして、運転手さんに大声で呼び戻されている場面を、私は何度も見てきました。運転手さんは怒っているわけではなく、「降りるときももう一回ピッしてください」と伝えたいだけ。多くの国のバスは「乗るときに払えば終わり」なので、降りるときにピッと言われても、その意味がすぐには伝わらないのです。

台北の悠遊カード(悠遊卡、ヨウヨウカー)は、見た目も使い方も Suica によく似ています。コンビニでチャージできて、改札にタッチすれば通れて、コンビニの支払いにも使える。ここまでは Suica とほぼ同じ感覚で問題ありません。でも、バスに乗るときのルールだけは、Suica の感覚のままだと必ずどこかで損をします

このノートは、初めて台北で悠遊カードを使う方向けに、在住者から見た「押さえておくと戸惑わない小さなルール」をまとめたものです。

MRT(地下鉄)は Suica とほぼ同じ

まず MRT から。台北 MRT の改札は、入るときも出るときもタッチが必要で、これは東京メトロや JR と同じです。運賃は距離制で、下車時に自動で差額が引かれます。ここは特に混乱するポイントはありません。

一つだけ知っておくと便利なのは、MRT の車内は飲食禁止が徹底されていること。日本の電車内でペットボトルの水を飲むのは普通ですが、台北 MRT では水一口でも罰金の対象になります(NT$1,500〜7,500)。ホームに入った時点でもう禁止エリアなので、改札を通る前に飲み終えるのが在地人の習慣です。

もう一つ、エスカレーターは右側に立ち、左側を空けるという長年の暗黙のマナーがあります。ルールとして決められているわけではなく、あくまで社会的な慣習です。実は台北 MRT は 2024 年 10 月から「両側に立ってください」と呼びかけていて、片側にだけ人が集中することによる機械の偏った摩耗や、歩行中の転倒事故を減らしたいとしています。ただ現場ではまだ多くの人が右側に立つ習慣が残っているので、周りに合わせて右側に立っておくのが無難です。急いでいる人は左側を駆け上がっていきます。

バスは「乗るときピッ、降りるときもピッ」

ここからが本題です。台北のバスは 2019 年 7 月からルールが変わって、上下車どちらでも必ずピッという運用になりました。

具体的な流れはこうです。

  1. 乗るとき:前の扉から乗って、すぐ横のリーダーに悠遊カードをタッチ。まず NT$15(普通カード)が引かれます。
  2. 降りるとき:前の扉でも後ろの扉でも、リーダーにもう一度タッチ。同一区間なら NT$0、区間をまたいだ場合は追加で NT$15 が引かれます。

つまり、「乗るとき」と「降りるとき」の 2 回タッチして初めて 1 回の乗車が完結するという設計です。

「同じ運賃なら降りるときのタッチは省略していいのでは?」と思うかもしれませんが、降りるときにタッチしないと、その後一定時間内の MRT や別のバスへの乗り換え割引が使えなくなります。台北で公共交通機関を乗り継ぐ人にとって、この割引は意外と効いてくるので、面倒でも降りるときのピッはやっておく方が得です。

もう一度まとめると——台北のバスは乗るときも降りるときも必ずタッチ。同じ運賃でも 2 回タッチが正解です。

後ろの扉のリーダーの見つけ方

台北のバスは、新しい車両だと後ろの扉にもカードリーダーがついています。降りるときは前の扉まで移動しなくても、後ろの扉のリーダーにタッチしてそのまま降りて構いません。

古い車両だと後ろにリーダーがないので、降りるときは前の扉まで歩いていってタッチする必要があります。乗ったときにリーダーの位置を軽く確認しておくと、降りる駅で慌てずに済みます。

日本のバスは「後乗り前降り」「前乗り前降り」など地方によって違いがありますが、台北は基本的に「前乗り・前後どちらでも降りられる」と考えてよいです。

「分段收費」——距離によって追加料金が発生するバスがある

台北市内で完結する多くのバスは 1 区間 NT$15 で済みますが、新北市(新北)まで足を伸ばす路線や、山エリアに向かう路線は「2 段票」「3 段票」といって、区間を跨ぐたびに追加で NT$15 かかります

これも降りるときのタッチで自動判定される仕組みなので、乗客側で特に何かする必要はありません。ただし、「あれ、思ったより引かれた」と感じたときは、区間をまたいだためだと考えてください

現金でも乗れるけれど、お釣りは出ません

悠遊カードを持っていなくても、運賃箱に現金を入れれば乗れます(普通運賃)。ただしお釣りは一切出ないので、ぴったりの小銭を用意しておく必要があります。運転手さんに両替を頼むこともできません。

博愛座(優先席)の話

もう一つ、初めての方が戸惑うことのある話題を。台北 MRT やバスには博愛座(優先席)があり、ダークブルーの座席として明確に区別されています。

日本の優先席と大きく違うのは、空いていても座らない人が多いという点。ラッシュ時でも博愛座だけがぽつんと空いていることがよくあります。「必要な人が来たらすぐ譲る」という前提が徹底されていて、健常者が座っていると SNS で撮られてしまうこともあるくらい、社会的な視線が厳しいエリアです。

観光客に対して咎める人はまずいませんが、「なんで空いてるのに誰も座らないんだろう?」と疑問に思ったら、それが博愛座だと思ってください。個人的には、混雑時でも普通席に立って待つ方が気楽です。

まとめ

台北の交通で外国からの旅行者が戸惑うのは、たいてい「バスの降りるときのピッ」です。ここさえ押さえておけば、MRT もバスも Suica と同じ感覚で乗れます。

  • MRT:入るときも出るときもタッチ(Suica と同じ)
  • バス:乗るときも降りるときもタッチ(Suica の感覚だと省略しがち)
  • 現金 OK、でもお釣りなし
  • カードの購入もチャージもコンビニで可能
  • 車内飲食禁止・エスカレーターは右側に立つのが今も一般的な習慣(ただし正式なルールではありません)

悠遊カードは Suica の遠い親戚のようなもので、DNA は似ているけれど、育った土地のルールは少しずつ違います。その違いを楽しむのも、台北を旅する醍醐味の一つだと思います。

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ゆきひめ(台湾在住・グルメ手帖)